三相同期発電機の学習は複雑に感じる内容が多いですが、中でも電機子反作用がとても複雑です。電機子反作用とは、電機子に発生する誘導電流が作る磁界が、界磁巻線の作る磁界に影響を及ぼすことです。
聞き慣れない単語が多く、複数の作用がお互いに影響を及ぼしあうため初めて学習する方には、とっつきにくくなっています。今回は、初学者でも知識だけでなく感覚的にイメージできるように豊富にイラストを用意して解説していきます。
機械科目の山場ともいえる同期機を一緒に攻略していきましょう。
同期機の構造
同期機の構造は、大まかに分類すると外枠の固定子、回転部分の回転子に分けられます。
一般的な同期発電機は、回転子を電磁石とし、タービンなどと接続することで回転力を受け固定子コイルに電磁誘導を発生させます。
回転子は電磁石になるため、回転子に巻かれた巻線(コイル)を界磁巻線と呼びます。
一方で、固定子に巻かれた巻線(コイル)を電機子巻線と呼びます。
同期機では、ほとんどの場合、固定子を「電機子」と呼びます。よって、電機子反作用とは、固定子の巻線が電磁誘導によって作り出した電流の磁界が、回転子巻線の磁界に与える影響のことを言います。
電機子反作用
回転子が回転することで、固定子の電機子巻線に電磁誘導が起こり誘導起電力を発生させます。
同期発電機を負荷に接続することで、回路が形成されるため、電流が流れます。
電機子巻線に電流が流れると、三相交流による回転磁界が発生します。
この電機子電流による磁束が、回転子による磁界(主磁束)を乱して、誘導起電力を変化させます。このことを、電機子反作用といいます。
三相同期発電機の電機子反作用は、無負荷誘導起電力\(\dot{E}_0\)と電機子電流\(\dot{I}\)との位相差\(\phi\)(発電機の負荷力率\( \cos \phi \)によって異なる働きをします。
交さ磁化作用(横軸反作用)
負荷力率\( \cos \phi = 1 \)のとき(電機子電流と無負荷誘導起電力が同位相のとき)
交さ磁化作用は、磁極の右側で界磁磁束を減少させて、左側で界磁磁束を増加させる作用です。
負荷力率が1のとき(抵抗負荷を接続したときなど)に起こります。
減磁作用(直軸作用)
負荷力率\( \cos \phi = 0\)(遅れ)のとき(電機子電流が無負荷誘導起電力より90°遅れているとき)
減磁作用とは、主磁束が、電機子電流による回転磁界によて弱められる現象を言います。
増磁作用(磁化作用)
負荷力率\(\cos \phi = 0\)(進み)のとき(電機子電流が無負荷誘導起電力より90°進んでいるとき)
増磁作用とは、主磁束が、電機子電流による回転磁界によって強められる現象です。
以上のように、同期発電機では、電機子反作用によって総磁束量が増減します。総合の磁束量が変化することで、電圧変動を引き起こすため、励磁を調節して電圧を一手に保つ必要があります。
同期電動機の電機子反作用
同期電動機の場合は、同期発電機の逆と考えることができます。
\( \cos \phi = 1 \)のとき:交さ磁化作用
\( \cos \phi = 0\)(遅れ):増磁作用
\( \cos \phi = 0\)(進み):減磁作用
まとめ
三相同期発電機の電気子巻線は、三相誘導電動機の固定子巻線と同様に三相巻線が施されているため、電気子電流によって同期速度で回転する回転起磁力を発生します。
この電機子起磁力が皆伝する主磁束(界磁起磁力)に影響を与えることを電機子反作用と呼びます。
電機子反作用は、電機子電流と無負荷誘導起電力の位相差によって効果が異なります。
三相同期発電機の電気子反作用は、この後学習する同期機の等価回路や性質にも関連が深い内容です。聞き慣れない単語や、相互作用の整理に苦労するかと思いますが、基本をしっかり押さえておくことが次の学習をスムーズに進める手助けになります。
1つ1つ確実に覚えてきましょう。
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