同期機には、同期電動機と同期発電機の2種類があります。同期機の多くは、発電所で発電機として使用されているため、電験三種でも同期発電機としての出題がほとんどです。
しかし、同期機を苦手に感じる受験生の方も多いと思います。私もその一人でした。
今回は、同期発電機の基本となる”発電原理”について解説していきます。
初学者の方にもイメージをしやすいように、イラストを多めに使用しての解説となっています。ぜひ最後まで読んでみてください。
同期機とは
同期機とは、回転磁界と同期して回転する交流機のことです。誘導機のようにすべりがないため、同期速度と同じ速さで回転することができます。

同期機は、同期発電機と同期電動機に分けることができますが、どちらも構造は同じです。
水力、火力、原子力発電所などの交流発電機はほとんどが同期発電機をしようしています。
そのため電験三種の試験では、同期機は発電機として利用されるケースを想定しての出題が多い傾向にあります。
三相同期発電機の原理

上図の磁石を回転させると、コイルを貫く磁束が変化し、電磁誘導によって電圧(誘導起電力)が発生します。
1回転(360度)で三相分の電力を発生させるために、3つのコイルを120度ずつずらして配置します。これによって、位相が120度 \( \left( \displaystyle \frac{2}{3} \pi \rm[rad] \right) \)ずれた誘導起電力を発生させています。
これが三相同期発電機の基本的な発電原理です。
同期速度
発生させる電圧の周波数は、磁極の数と回転速度(同期速度)によって決定します。
同期速度は、三相誘導電動機で学習する公式と同じもので求めることができます。
\( N_s = \displaystyle \frac{120 f}{p} \)
例えば、磁極の数が4の三相同期発電機で周波数50 [Hz]の電圧を発生させたい場合、回転速度(同期速度)は以下のように計算します。
\( N_s = \displaystyle \frac{120 \times 50}{4} = 1500 \ \rm [min^{-1}] \)
極ピッチ
極ピッチとは、回転磁極のN極の中心から次のS極の中心までの距離[m]を言い、記号は \(\tau\)(タウ)で表します。

発電機は、電磁誘導を利用することで発電しています。
1つのコイルに注目すると、磁極の数が多いほど1回転の間に生じる電磁誘導の回数が多くなるため高い周波数の電圧を発生することができるいえます。
誘導起電力の大きさ
三相誘導電動機の一相分の誘導起電力\(E\)[V]は、以下の式で表すことができます。
\( E = 4.44 K_w f w \phi \ \rm[V] \)
E:誘導起電力、f:周波数、w:コイルの巻数、\(\phi\):1極あたりの磁束、\(K_w\):巻線係数
電験三種では、巻線係数は無視されることが多いので、ここでは深く解説はしません。
発電にはフレミングの右手の法則が利用されており、\( e = B l v \) [V]の公式が基本になります。
まず、磁束密度B [T]は、コイルと磁極の相対的な位置によって変化するため、
\( B = B_m \sin \omega t \)
で表すことができます。

次に\(l\) [m]は導体の長さを表しています。
速度\(v\) [m/s]回転速度のことで、作り出したい周波数や極ピッチによって決定します。

以上の3つの要素を基本の公式\(e = Blv\)に代入すると、
\( e = B_m \sin \omega t \times l \times 2\tau f \)
となります。1極あたりの磁束\(\phi\) [Wb]について

正弦波で変化する磁束密度の平均値は、\(B_{Ave} = \displaystyle \frac{2}{\pi}B_m\) [T]となります。
導体の長さ\(l\) [m]、極ピッチ\(\tau\) [m]とすると、
\( \phi = B_{Ave} \tau l = \displaystyle \frac{2}{\pi}B_m \tau l \) [Wb]
よって、
\(B_m = \displaystyle \frac{\pi}{2\tau l} \phi \)
巻線1本当たりの誘導起電力の大きさ(実効値)
誘導起電力\(e\)は正弦波であるため、実効値\(E_1\)[V]は\(e\)の最大値の\( \displaystyle \frac{1}{\sqrt2} \)倍で表すことができます。
\(\begin{align} E_1 &= e \times \displaystyle \frac{1}{\sqrt2} \\ &= B_m l \times 2 \tau f \times \displaystyle \frac{1}{\sqrt2} \\ &= \displaystyle \frac{2}{\sqrt2} \tau f l B_m \end{align} \)
磁束密度\(B_m\)を磁束\(\phi\)に変換すると
\(\begin{align} E_1 &= \displaystyle \frac{2}{\sqrt2} \tau f l B_m \\ &= \displaystyle \frac{2}{\sqrt2} \tau f l \times \displaystyle \frac{\pi}{2\tau l} \phi \\ &= \displaystyle \frac{\pi}{\sqrt{2}} f \phi \\ &\approx 2.22f\phi \ \rm[V] \end{align} \)
巻数がwの場合
巻数を1増やすと、導体は2本増えると考えることができます。

直列接続されている巻線(コイル)の巻き数がwの場合、直列接続される導体の数は2w [本]になります。
よって一相分の誘導起電力\(E\) [V]の大きさは、
\( E = 2.22 f \phi \times 2w = 4.44fw\phi\) [V]
とも導くことができます。
まとめ
同期速度:\( N_s = \displaystyle \frac{120 f}{p} \)
1相分の誘導起電力の大きさ:\( E = 4.44 K_w f w \phi \ \rm[V] \)
コメント
コメント一覧 (1件)
今晩は、分かりやすい解説でよく利用させてもらってます。理解につまづいた所があります。同期発電機の発電原理の記事「極ピッチ」の4極回転子の図において
上側N極の所の固定子コイルは手前向き(・)に起電力発生の図になっています。
下側N極の所の固定子コイルは紙面裏向き(×)に起電力発生の図になっていますが、このコイルにも手前向きの起電力(・)が発生すると思いますが、いかがですか?
そして右側や左側のS極の所には固定子コイルが省略されていますがここには紙面裏向き(×)の起電力が発生すると考えたのですが。回答よろしくお願いします。