同期発電機は大型の発電機にも使用されているため、構造を理解することはとても大切です。しかし、市販の参考書には概略図しか乗っていない場合が多く、実際の機会を見たことのない学習者にとってはとっつきにくく感じてしまします。
今回は、同期発電機の構造を豊富なイラストを用いて解説してきます。少しでも電験の学習の参考になれば幸いです。
✓固定子の構造を理解する
✓回転子の構造を理解する
✓励磁総理の役割と種類を理解する
三相同期発電機の構造
三相同期発電機には、色々な種類のものが存在します。1つの例として、ガスタービン発電機の構造を下図に示します。
これまでの回転機器と同様に、静止している部分の「固定子」と回転している部分の「回転子」からなります。
また、同期発電機は回転子を電磁石とするために励磁装置が回転子と同じ軸上に取り付けられています。
固定子
固定子は、回転しない部分のことで、電機子巻線(固定子コイル)や電機子鉄心(固定子鉄心)から構成されます。
絶縁処理したコイルを固定子鉄心にはめ込み、図のように結線して、固定子巻線とします。
鉄心は、薄い電磁鋼板を何枚も積み重ねて(積層構造で)作られています。
電磁鋼板、積層構造とは?
電磁鋼板とは、軟磁性材料の一種で、多くの磁力線を通す事ができかつ安価な鉄鋼材料です。
電磁鋼板には、圧延方向にのみ特に優れた磁気特性を持つ方向性電磁鋼板と、全方向に優れた磁気特性を持つ無方向性電磁鋼板に大別されます。
方向性電磁鋼板は主として変圧器などの静止機器に、無方向性電磁鋼板は主としてモータなどの回転機に使用されます。
積層構造とは、表面を絶縁被膜でコーティングした鉄板を何枚も積み重ねて形作られる構造です。電動機や変圧器などの鉄心に一般的に用いられる構造となっています。
積層構造とするメリットは、薄い鉄板にすることで、磁束の通り道をできるだけ狭くすることができるため、渦電流の発生を低く抑えることができます。その結果、渦電流による損失が小さくなります。
直流電動機では、回転子を電機子と呼びましたが、同期機では固定を電機子と呼んでいます。
電機子とは、界磁巻線によって作られる磁界の影響を受けて、発電や電磁力を発生させる部分のことを指して読んでいます。
機械の種類によって、電機子がどの部分を指しているかは異なるので、界磁巻線じゃない方の巻線を取り付けた部分が電機子と覚えておきましょう!
回転子
回転子は、回転する部分のことで主軸、鉄心、巻線(界磁巻線または回転子巻線ともいう)、冷却ファンなどから構成されます。
磁極は普通、界磁巻線に電流を流し電磁石としたものが利用されます。
回転子には「突極型」と「円筒型(非突極型)」の2種類があります。
「突極型」の回転子は、磁極が個々に突き出た形状で、磁極部分に界磁巻線がとりつけられています。
「円筒型」の回転子は、界磁巻線が磁極部分以外の全周に組み込まれています。鉄心にはめ込まれたコイルは、回転によって飛び出さないように、くさびをはめ込んで固定されています。
「突極型」と「円筒型」の使い分け
突極型は大きな遠心力が加わると主軸などに負担がかかり破損する恐れがあるため、低速回転で発電するすり力発電(水車発電機)に使用されます。
水車発電機は回転速度が遅いため、極数を多くする必要がありますが、遠心力への影響が小さいため構造が簡単な突極型が利用されます。
一方、円筒型は突極型に比べ大きな遠心力にも耐えられる構造になっています。そのため、高速で回転するタービン発電機(原子力・火力発電)で利用されています。
高速で回転するため、磁極の数は少なくて済みますが、大きな遠心力が加わるため、細長い円筒形にして、できるだけ遠心力が小さくなるように設計されます。
励磁装置
回転子に永久磁石を使用しない同期発電機については、回転子を電磁石とするための励磁装置が必要になります。
励磁装置には、「直流励磁方式」、「交流励磁方式」、「ブラシレス励磁方式」、「サイリスタ励磁方式」の4つがあります。
直流励磁方式
直流発電機を励磁機として界磁を調整する方式です。半導体技術の新保によって現在ではほとんど採用されなくなっています。
交流励磁方式
励磁装置の電源に励磁用の同期発電機を用い、整流装置で直流に整流してスリップリングを介して主機の界磁巻線に供給する方式です。
この励磁用の動機発電機を交流励磁機といい、他励式と分巻式(自励式)に分けることができます。
他励式は、タービン発電機や交流励磁機と同一軸上に取り付けられた副励磁機の出力または励磁用変圧器を通して交流励磁機に励磁電流を供給します。
分巻式は、交流励磁機の出力を自身の界磁電流の電源として使用します。
交流励磁方式は整流子がなく、回転部分や接触面が少ないので保守・点検が簡単ですが、交流励磁機が遅れ要素として加わるため、一般的に応答速度が遅くなります。
これ解決するために整流装置にサイリスタを使用し、励磁装置の頂上電圧を高くします。
AVRとは
AVRとは、Automatic Voltage Regulatorを略したもので自動電圧調整器とも呼ばれています。 AVRは、自動的に電圧を安定化させるための装置で、AVRから見て入力側(商用ライン)の電圧が変動したり、AVRの出力側(負荷)に流れる電流が変動してもAVRの出力電圧を一定に保つように動作します。
発電機におけるAVRの使用用途は、発電機端子電圧を計器用変圧器(VT)を介して検出し、電圧設定器との偏差を求め、界磁電流を調整して電圧を制御します
ブラシレス励磁方式
タービン発電機と同一軸上に回転電機子形の同期発電機と整流器を取り付け、スリップリングを経由せずに、直接さービン発電機の界磁巻線に電流を供給する方式です。主機の界磁電流の調整は交流励磁機の界磁電流調整によって行います。
ブラシがない(ブラシレス)なため、ブラシの点検や摩耗による取り換えが不要、整流器の保守点検が不要、励磁機用の開閉装置が不要などのメリットがあります。しかし、整流器が大きな遠心力を受けることから、機械的強度を考慮した設計が必要です。
回転整流子
回転整流器は、冷却ブロックに取り付けられた、シリコン整流素子、サージ吸収器により構成されています。シリコン整流素子は、三相全波整流回路を形成するよう接続され、電流容量、逆耐電圧に十分な余裕を持たせて素子の選定がさています
整流回路に発生する転流サージは、各整流素子に並列に接続されているサージ吸収器によって吸収されます。また、位相差投入などにより生じる界磁誘導電圧に対しては、界磁巻線に並列に接続されている放電抵抗によって保護します。
ブラシレス励磁方式も交流励磁方式と同様に自励式と他励式の2種類の励磁方式があります。
サイリスタ励磁方式(静止励磁方式)
励磁装置が励磁用変圧器や励磁用変流器などとサイリスタを使用した整流器で構成される励磁方式です。
主発電機の出力の一部を使用してサイリスタを使用した整流装置で、主機の界磁巻線に供給する直流電流を生成します。
サイリスタ励磁方式は、バルブデバイスの構成によって、均一ブリッジ形と混合ブリッジ形に分類されます。
サイリスタ励磁方式は、回転機の慣性が入らないため感度が良く、速応性があり、可動部や接触部がないため、信頼性が高く保守のしやすい構造となっています。
4つの励磁方式に共通することは界磁電流は直流電流であることです。停止中の発電機は自身で界磁電流を作り出せないため、蓄電池などから直流電流を供給する必要があります。
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