今回は、変圧器内部の異常診断と精度の高い油中ガス分析の結果の確認と採油じの注意点について解説していきます。
絶縁油のガス分析って何?
油入変圧器では、コイルの絶縁のために油(絶縁油)を使用しています。絶縁油は、過熱や放電が発生すると分解されて可燃性のガスを発生します。過熱や放電は変圧器の内部に何らかの異常がある場合に起こる現象です。したがって、絶縁油に含まれる可燃性ガスの成分を調査することで、変圧器内部に異常が発生していないかを確認することができます。
下記のリンク先では、絶縁油の過熱や放電の実験映像を見ることができます。
ぜひご参考にしてみてください。
可燃性ガスと内部異常の種類
低温過熱→エタン\(\left(C_2H_6 \right)\)
高温加熱→エチレン\(\left(C_2H_4\right)\)
内部放電→水素\(\left(H_2\right)\)、アセチレン\(\left(C_2H_2\right)\)
またガスの発生パターンによってより詳細に内部異常の様子を知ることができます。
ガス分析会社の報告書では注意レベルが記載されています。
しかし、電気設備を管理するものとして可燃性ガスがそのような原因から発生するかを知っておくことで今後の対応や変圧器の管理を適切にできると思います。
長期間使用している変圧器になると、可燃性ガスの発生量も比較的多くなりますが、ここで重要なのは傾向管理だといえます!緩やかな上昇か、急激な上昇か、これによって対応は大きく変化します。
- 緩やかな上昇→大きな異常は見られないため経過観察 & 更新計画を立てる
- 急激な上昇→内部異常が発生している可能性が高い!!早急に更新を進める
採油方法と注意点
絶縁油を外部の分析機関に依頼する場合、専用の採油缶が送られてきます。採油時の気温や湿度、天気などの情報とともに採油缶いっぱいに絶縁油を採油し分析を依頼するわけですが、ここでも注意しなければいけないことがいくつかあります。
PCBは含まれていないか
PCBとはポリ塩化ビフェニル(Poly Chlorinated Biphenyl)のことで人工的に作られた、 主に油状の化学物質です。
特徴
- 水に溶けにくい
- 沸点が高い
- 熱で分解しにくい
- 不燃性
- 電気絶縁性が高い
化学的にも安定な性質を有することから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など様々な用途で利用されていましたが、毒性の強い物資のため、1974年に製造・輸入ともに禁止されています。
PCBを含機器については指定された業者でしか処分ができないため、うかつに採油することはできません。処分期限が法律で定められているため、専門業者に依頼して一度分析を実施しましょう。
採油缶に異物が混じっていないか
採油缶に異物が混じっていては正確な分析ができません。そのため、採油缶を分析依頼をかける絶縁油で軽く共洗いすることが大切です。
雨天時など天候が悪い日の採油は避ける
絶縁油の劣化水分によっても引き起こされるため、油中ガス分析では、絶縁油に含まれる水分量も測定します。
水分を多く含みやすい気象条件の時に、絶縁油の採油を実施してしまうと実態とは異なった分析結果となる恐れがあります。費用を掛けて、診断を行うわけですから正しい結果が得られるように採油時の条件はなるべく変化がないといいです。
油はこぼさないように取り扱おう
工場では、油をこぼすると石災法異常現象とみなされてしまうことがあります。各工場や地域によっても管理の厳しさは異なりますが、工場が連なるコンビナートと呼ばれるような場所では、一滴でも油をこぼしら即通報しなければいけにといったレベルで管理がめちゃくちゃ厳しいです。(泣)
誰かに依頼する場合であっても自社工場の規定を守るように作業前にきちんと伝えておきましょう。
まとめ
変圧器の内部異常を確認するためにはガス分析は欠かせません。より正確に状態を把握するためには絶縁油の傾向管理も必要となります。定期的にガス分析を行い、事故を起こす前に変圧器の更新計画を立てていきましょう。
また、PCBを含む変圧器の場合処分期限が決められており、取扱業者も限られています。早めの更新計画をお勧めします。変圧器更新の際の、チェックポイントについては以下の記事を参考ください!
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