【解説】磁界の中を流れる電流に働く力(電磁力)について

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磁界の中を流れる電流には、力(電磁力)が働きます。この原理は、電動機(モーター)の回転原理にも利用されているため、電験を取得するうえで避けては通れない学習範囲です。

計算問題では、\(\sin \theta\)や\(\cos \theta\)などの三角関数を必要とする場面もあり、初学者にはとっつきにくい内容も多くあります。

今回は、計算式の導出書いてもできるだけ図を省かずに解説していきますので、学習の参考にしてみて下さい。

この記事でわかること
  • フレミングの左手の法則
  • 電磁力の大きさ
  • 平行導体間に働く力(アンペールの力)
  • ローレンツ力
  • コイルに働くトルク

ももよし
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電磁気の計算問題では、頻出の範囲です!

一つずつ意味を理解しながら先へ進もう

電磁力とは

電磁力とは、電流が流れている導体が磁界から受ける力のことを言います。

電磁力は『力』なので、”大きさ”と”向き”があります。

ももよし
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磁力(磁石の力)とは全く別物なので勘違いしないように注意!!

フレミングの左手の法則(電磁力の向き)

上図のように、N極とS極の間に導体をぶら下げ、電流を流すと導体が外側へ飛び出すように動きます。この時、導体を動かす力を『電磁力』といい、電磁力のはたらく向きは、フレミングの左手の法則によって求めることができます。

フレミングの左手の法則は上から、F:力、B:磁束密度(磁界の向き)\(_{※}\)、I:電流の向きとなっており、『FBI(エフビーアイ)』と覚える方法と、下から電流、磁界、力で『電・磁・力』と覚える方法が有名です。

※厳密には磁界と磁束密度の意味は異なります。

導体に電流を流すと、その周りには右ねじの法則によって磁界が発生します。

導体を流れる電流による磁界が永久磁石の作る磁界を乱すことによって導体の左側では磁界が強くなり、右側では磁界が弱くなります。

電磁力の力の大きさ

磁界の中に置いた電流が流れる導体に働く力の大きさは、磁束密度(磁界の強さ)を\(B [T]\)、磁界と直角に交わる導体の長さを\(l [m]\)、電流の大きさを\(I [A]\)とすると、

電磁力の大きさ

\( F = B \times I \times l \rm[N] \)

と表すことができます。

電磁力を考える時に重要なのは、磁界と直角(90度)で交差する成分だけを考える点です。
しかし、電動機(モーター)などの動機械では直角に交わる瞬間ばかりではありません。

では、直角に交わらない場合はどのように考えていくかを解説していきます。

磁界と導体が斜めになっているときは?

導体や磁石が斜めにおいてあるときはどうしたらいいの??

ももよし
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そんな時は、磁界、導体、補助線を使って三角形を書く。

作図から、磁界と垂直な分の長さを調べて力の大きさを求めるよ!

導体が磁界と角度\(θ\)で交差しているとき、磁界と垂直な分の導体の長さは赤の点線部分になる。

赤の点線の長さは、三角関数を使って

\( I \times \sin \theta \) [m]

で表すことができる。よって電磁力の力の大きさは次のようになる。

電磁力の力の大きさの公式

\( F = B \times I \times l \sin \theta \ \rm[N]\)

平行導体間にはたらく力(アンペールの力)

2本の長い導体に同じ向きに電流を流すと導体は引き合い、逆向きに流すと導体は反発しあいます。

2本の導体に同じ向きの電流が流れる場合、内側では磁界を打ち消しあい、外側では磁界を強めあうような磁界が発生します。これにより力のつり合いをとるために、導体には内側方向(引き合う方向)に力がはたらきます。

2本の導体に流れる電流が逆向きの場合は、先ほどとは、逆に内側で磁界を強めあい、外側で磁界を弱めあうため反発するように導体に力がはたらきます。

平行導体間にはたらく電磁力の大きさ

\( F \frac{μ I_a I_b}{2 \pi r}=\frac{μ_0 μ_r I_a I_b}{2 \pi r} \)

導体に流れる電流:\(I_a , I_b [A]\)

透磁率:\(μ [H/m]\)

導体間の距離:\(r [m]\)

真空の透磁率:\(μ_0 [H/m]\)

比透磁率:\(μ_r\)

ローレンツ力

ローレンツ力とは、荷電粒子が磁界中を移動する際に磁界から受ける力のこと。

導体の中を移動する荷電粒子1つが持つ電荷を\(q [C]\)、単位長さ(\(1[m]\))あたりに存在する荷電粒子の数が\(N [個/m]\)移動速度が\(v [m/s]\)のとき、電流の大きさは

$$i=qNv [A]$$

と表せる。したがって、導体に働く力は、

$$F=B\times i [A] \times 1[m]=B\times qNv [N]$$

荷電粒子1つあたりにはたらく力(ローレンツ力)の大きさは、

$$f=\frac{F}{N}=\frac{B\times qNv}{N}=qv\times B [N]$$

と表すことができます。

電磁力(アンペールの力)とローレンツ力の違い

電磁力は、磁界中を移動する電流にはたらく力であるのに対し、ローレンツ力は磁界中を移動する荷電粒子にはたらく力を表します。すなわち、荷電粒子1粒にはたらくローレンツ力を足し合わせたものが電磁力(アンペールの力)になるのです。

コイルに働くトルク

トルクとは、回転させようとする力のことを言います。

トルクは記号Tで表され、単位は[N・m]ニュートンメートルを使います。加える力によって回転し、角度が変化するためその影響を考慮すると次の式でトルクを表すことができます。

トルクの公式

\( T = F \times D \cos \theta \) [N・m]

電磁力による回転力(トルク)を利用したものに電動機(モーター)があります。その基本となる原理は次のようになります。

回転軸を中心に考え、回転軸からコイルの端までの長さ(うでの長さ)を\(\frac{D}{2}\),導体の長さ(コイルの奥行)を\(l [m]\)、磁束密度(磁界の強さ)を\(B [T]\)、電流の大きさを\(I [A]\)とするとコイルにはたらくトルクの大きさは

コイルにはたらくトルク

\( T= F \times D \cos \theat = B I l \times D \cos \theta \) [N・m]

まとめ

今回は電磁気の中でも、問題として出題される傾向が高い電磁力の範囲についてまとめました。

理屈を理解することが解答できるようになる近道です。クセのある分野ですが、1つずつ覚えていきましょう!

ももよし
ももよし

電験合格を目指してがんばろ~!

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