接地補償用コンデンサとは?

先日、Twitterでこのような投稿を見かけました。

接地補償用コンデンサとは何なのか?聞き慣れない方もいるのではないでしょうか。

最近、高圧キュービクルの設計に携わる機会があったので、その時に学んだ接地補償用コンデンサについて解説します。

▲接地補償用コンデンサを設置するキュービクルの単線結線図の例

接地補償用コンデンサは、高圧変圧器の二次側を非接地の系統とする場合に漏れ電流に対する保護装置を確実に動作させるために取り付けられます。

このコンデンサの役割を知らないと、現場で恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。電気主任技術者としてはぜひ知っておきたい知識です。

それでは、解説していきます。

目次

接地用コンデンサとは

接地用コンデンサとは、高圧変圧器の二次側を非接地系とした場合でも、漏電リレーを確実に動作させるために用いるコンデンサのことです。

変圧器の二次側を非接地とした場合、ケーブルの静電容量を介してしか漏れ出た電流の帰り道がないため、電流の値は非常に小さくなってしまいます。

そのため、漏電リレーでは検出することが難しい場合があります。

変圧器二次側を非接地とした場合の漏れ電流の流れ

そこで、コンデンサを介して変圧器の二次側を接地することで、漏れ出た電流の帰り道を形成し、確実に漏電遮断器が動作(または漏電リレーが検出)できるようにします。

(図:コンデンサ接地の地絡電流の流れ)

高圧変圧器であっても混色防止版を設けてB種接地を行う場合には、変圧器の二次側を非接地とすることができます。(電気設備技術基準 第24条1項ハ より)

地絡電流を小さく抑えるために、6600V/105V-210Vを作り出す単相3線式の変圧器の二次側は非接地とすることがあります。この時、ケーブルの静電容量を介してしか漏れ電流の帰路がないため、漏れ電流は非常に小さいくなり、漏電遮断器(ELCB)が動作しない恐れがあります。
そこで、接地補償用コンデンサを接続することで漏れ電流の帰路が形成され、漏電遮断器を確実に動作させることができるように設計します。

単相3線式でも非接地運転すると端子間の電圧は正常な値がでますが、端子-対地間の電圧が微妙に異なる値になってしまいます(汗)。ガスクロなどの精度の高い分析計はこれを嫌う傾向があるので注意が必要です。

地絡電流の計算

接地用コンデンサを用いた場合の一線地絡事故が発生した場合の地絡電流の大きさは次のように計算できます。

ただし、接地用コンデンサの静電容量をC[F]、周波数をf[Hz]、線間電圧をV[V]、地絡電流\( \rm I_g \)[A]とします。

\( I_g = \displaystyle \frac{V}{\sqrt{3}} \times 2 \pi f C \)

接地補償用コンデンサの容量は、一線地絡事故が発生した際に流れる地絡電流の大きさを何mAにするかによって決定します。

幹線用の漏電遮断器の場合感度電流を200mAや500mA、動作時間を0.3sなどに設定し、末端の漏電遮断器との協調が取れるように設計します。

漏電遮断器の動作感度については内線規程の1375-3にも記載があるので設計する際は確認することをお勧めします。

接地補償用コンデンサの選定については、メーカーカタログに記載があることが多いです。一例として指月電機のカタログのリンクを張っておきますので、興味のある方読んでみて下さい。

接地用コンデンサとZPDの違い

接地用コンデンサと似たような取り付け方法をしているコンデンサ機器としてZPD(

Zero-Phase Potential Device)零相電圧検出装置があります。

地絡保護に関する点では似ていますが、検出する要素が異なります。

接地用コンデンサは、変圧器二次側の静電容量を大きくし漏れ電流を大きくし漏電リレーを確実に動作させるために使用します。

一方、ZPDは6kVや3kVなどの高圧系統において零相電圧を検出するために使用する機器です。

高圧配電線より電力供給を受ける高圧需要家ではこのZPDにより零相電圧を検出します。

ZPDを採用する理由

・配電線で地絡事故が発生した際に絶縁抵抗計による事故点調査ができる
・多重接地となり、地絡電流の検出が困難になることを防ぐ

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この記事を書いた人

中学校教師から電気エンジに転職し現在は66kV/155MWの工場で電気主任技術者として活動中です。
電験3種、電験2種を独学で合格した経験から、初心者がつまづきやすいポイントをどこよりもわかりやすく解説する電験ブログを目指して活動しています。
2023年より、電験三種のオンライン家庭教師も始めました!
目標は、電気監理技術者と独立し、年収1000万以上を達成することです。

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