【過去問解説】H27年理論 問1 コンデンサに関する選択問題

問題

平行平板コンデンサにおいて,極板間の距離,静電容量,電圧,電界をそれぞれ\( d\) [m],\(C\) [F],\(V\) [V],\(E\) [V/m],極板上の電荷を\(Q\) [C]とするとき,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,極板の面積及び極板間の誘電率は一定であり,コンデンサの端効果は無視できるものとする。

(1) \(Q\)を一定として\(d\)を大きくすると,\(C\)は減少する。
(2) \(Q\)を一定として\(d\)を大きくすると,\(E\)は上昇する。
(3) \(Q\)を一定として\(d\)を大きくすると,\(V\)は上昇する。
(4) \(V\)を一定として\(d\)を大きくすると,\(E\)は減少する。
(5) \(V\)を一定として\(d\)を大きくすると,\(Q\)は減少する。

解説

答え:(2)

(1):極板間距離と静電容量の関係

平行板コンデンサの静電容量\(C\) [F]は,極板の面積を\(S\ \rm [m^2] \),誘電率を\(ε\) [F/m],極板距離を\(d\) [m]とすると以下の式で表すことができます。

\( C = ε\displaystyle \frac{S}{d} \)

電荷\(Q\) [C]の大きさに関係なく,極板間距離\(d\) [m]が大きくなると静電容量\(C\) [F]は小さくなるため,正しいといえます。

(2):極板間距離と電界の関係(電界\(Q\)が一定の場合)

電荷\(Q\) [C]が一定に保たれているとき極板から出る電気力線の本数は,

\( 電気力線[本] = \displaystyle \frac{Q}{ε} \)

で表すことができます。電界\(E\)の大きさは,電気力線の密度によって決まるため,極板の表面積を\(S \ \rm [m^2] \)とすると,

\( E = \displaystyle \frac{Q}{ε} \times \displaystyle \frac{1}{S} = \displaystyle \frac{Q}{εS} \)

と表すことができます。したがって,極板間距離\(d\) [m]には関係なく,コンデンサ内部の電界はどの地点でも同じ「平等電界」となります。

よって、(2)が誤りとなります。

\( E = \displaystyle \frac{V}{d} \)の式で考える場合

電圧\(V\)は,静電容量\(C\) [F]と電荷\(Q\) [C]を用いて表すと,
\( V = \displaystyle \frac{Q}{C} \)
となります。

静電容量\(C\)は(1)で求めたように,
\(C = ε\displaystyle \frac{S}{d} \)
と表せます。

したがって、
\( \begin{align} E &= \displaystyle \frac{V}{d} \\ \\ &= Q \times \displaystyle \frac{d}{εS} \times \displaystyle \frac{1}{d} \\ \\ &= \displaystyle \frac{Q}{εS} \end{align} \)

となり,極板間距離\(d\)に関係がない式を導くことができます。

(3):電位と極板間距離の関係

電圧\(V\)は,静電容量\(C\) [F]と電荷\(Q\) [C]を用いて表すと,

\( V = \displaystyle \frac{Q}{C} \)

となります。静電容量\(C\)は(1)で求めたように,

\(C = ε\displaystyle \frac{S}{d} \)

と表せるので,電位\(V\) [V]の式は,

\( \begin{align} V &= \displaystyle \frac{Q}{C} \\ \\ &= \displaystyle \frac{Q}{ε\displaystyle \frac{S}{d}} = \displaystyle \frac{Qd}{εS} \end{align} \)

となります。電位の式から,電位の大きさと極板間距離\(d\)の大きさ比例していることが分かるので,(3)は正しいといえます。

(4):極板間距離と電界の関係(電圧\(V\)が一定の場合)

電圧\(V\)が一定の場合,平行板コンデンサの電界\(E\)は,極板間距離\(d\)を用いて,

\( E = \displaystyle \frac{V}{d} \)

と表すことができます。電圧\(V\)は一定なので,極板間距離\(d\)が大きくなると,電界\(E\)は小さくなります。

(5):電荷と極板間距離の関係

平行板コンデンサの静電容量\(C\) [F]は,極板の面積を\(S\ \rm [m^2] \),誘電率を\(ε\) [F/m],極板距離を\(d\) [m]とすると,

\( C = ε\displaystyle \frac{S}{d} \)

で表すことができます。電圧\(V\)が一定の場合,

\( \begin{align} Q &= C \times V \\ \\ &=ε\displaystyle \frac{S}{d} \times V \\ \\ &= \displaystyle \frac{εSV}{d} \end{align} \)

と変形することができ,電荷\(Q\)の大きさは,極板間距離\(d\)と反比例の関係にあることが分かります。

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この記事を書いた人

中学校教師から電気エンジに転職し現在は66kV/155MWの工場で電気主任技術者として活動中です。
電験3種、電験2種を独学で合格した経験から、初心者がつまづきやすいポイントをどこよりもわかりやすく解説する電験ブログを目指して活動しています。
2023年より、電験三種のオンライン家庭教師も始めました!
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