【過去問解説】 H30理論 問7 複数の電源を持つ直流回路の計算問題

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問題

図のように,直流電圧 \(E=10\ \rm V\) の定電圧源,直流電流 \(I=2\ \rm A\) の定電流源,スイッチ\(\rm S\) , \(r=1\ \Omega\) と \(R\ [\Omega]\) の抵抗からなる直流回路がある。この回路において,スイッチ \(\rm S\) を閉じたとき, \(R\ [\Omega]\) の抵抗に流れる電流 \(I_R\) の値 [\(\rm A\)] が \(\rm S\) を閉じる前に比べて \(2\) 倍に増加した。\(R\) の値[\(\Omega\)]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) \(2\)  (2) \(3\)  (3) \(8\)  (4) \(10\)  (5) \(11\)

解説

答え:(1)

スイッチを閉じる前の電流を求める

スイッチを閉じる前は,定電流源と抵抗 \(R\) のみが直接接続された直流回路であるから,抵抗 \(R\) に流れる電流 \(I_{R1}\) は,

\(I_{R1} = I = 2\ \rm A \cdots \cdots \left(1\right) \)

重ね合わせの理で考える

今回の問題のように電圧源や電流源が複数ある場合には、「重ね合わせの理」を使って計算することで簡単に解くことができます。

「重ね合わせの理」において,注目する1つの定電圧源または,定電流源以外はそれぞれ以下のように考えます。

定電圧源:「短絡状態」
定電流原:「解放状態」

よって,問いで与えられた回路図は以下の2つの回路を重ね合わせたものと考えることができます。

定電圧源に注目した場合

定電圧源に注目した場合,定電流源は「解放状態」とみなすことができるので,以下の直流回路を計算することで,抵抗 \(R\) を流れる電流 \(I_{R2}\) を求めることができます。

オームの法則より,

\(I_{R2} = \displaystyle \frac{10}{1 + R} \ \cdots \cdots \left(2\right) \)

と求めることができます。

定電流源に注目した場合

定電流源に注目した場合,定電圧源は「短絡状態」とみなすことができるので,以下の直流回路を計算することで,抵抗 \(R\) を流れる電流 \(I_{R2}\) を求めることができます。

定電流源からは,常に回路に一定の(今回の問いでは \(2\ \rm A\) )電流が流れるので,定電流源から見て並列に接続された2つの抵抗には,抵抗値の逆数に比例した電流が流れます。

\(\begin{align} I : I_{R3} &= \displaystyle \frac{1}{\displaystyle \frac{R \times 1}{R+1}} : \displaystyle \frac{1}{R} \\ \\ \color{red}{ 2 } : I_{R3} &= \displaystyle \frac{R+1}{R} : \displaystyle \frac{1}{R} \\ \\ 2 \times \displaystyle \frac{1}{R} &= I_{R3} \times \displaystyle \frac{R+1}{R} \\ \\ 2 &= I_{R3} \times \left( R+1 \right) \\ \\ I_{R3} &= \displaystyle \frac{2}{R+1} \cdots \cdots \left(3\right) \end{align} \)

スイッチを閉じた状態での抵抗 \(R\) を流れる電流\(I_R\)を求める

スイッチを閉じた状態での抵抗 \(R\) を流れる電流\(I_R\) の大きさは式(2),(3)より,

\(\begin{align} I_R &= I_{R2} + I_{R3} \\ \\ &= \displaystyle \frac{10}{1 + R} + \displaystyle \frac{2}{R+1} \\ \\ &= \displaystyle \frac{12}{R+1} \cdots \cdots \left(4\right) \end{align} \)

と計算することができます。

問いの条件より抵抗の値を計算する

問題文の条件より,スイッチ \(\rm S\) を閉じたときの電流 \(I_{R}\) は,スイッチを閉じる前の電流の2倍になったと記述があるので,式(1),(4)を用いて計算すると,

\(\begin{align} I_R &= 2 \times I_{R1} \\ \\ \displaystyle \frac{12}{R+1} &= 2 \times 2 \\ \\ 12 &= 4 \times \color{red}{ \left( R+1 \right) } \\ \\ 4R &= 12 \color{red}{ – 4 } \\ \\ 4R &= 8 \\ \\ R &= 2 \end{align} \)

よって,答えは(1)となります。

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この記事を書いた人

中学校教師から電気エンジに転職し現在は66kV/155MWの工場で電気主任技術者として活動中です。
電験3種、電験2種を独学で合格した経験から、初心者がつまづきやすいポイントをどこよりもわかりやすく解説する電験ブログを目指して活動しています。
2023年より、電験三種のオンライン家庭教師も始めました!
目標は、電気監理技術者と独立し、年収1000万以上を達成することです。

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