【解説】変圧器の三相結線

今回は、変圧器の三相結線について解説します。

結線方式に関する出題数はそれほど多くはありません。しかし、実際に仕事で携わるようになると変圧器の結線を知らないのはかなりの致命傷です。ここでは電験3種の受験に役立ち、 実務でも必要とされる内容に絞って解説していきます。

さらに詳細な理論について学びたいという方は個別のリンク先で学習を深めていただければと思います。それでは、学習を始めていきましょう。

目次

変圧器の三相結線とは

三相結線とは、三相交流回路において各相を同時に変圧したい場合に、単相変圧器を2台または3台の結線方法のとこを言います。下の図1は代表的な三相結線を示しています。

▲図1 代表的な三相結線

三相結線には、それぞれの特徴があるので以下では各結線方式について説明していきます。

Δ-Δ結線

Δ(デルタ)結線とは変圧器3台を三角形の様に接続する結線方法です。

▲図2 デルタ-デルタ結線

結線図は電気図面などでは良く記載される表記です。この線の図だけでは、初学者には非常にわかりにくいと思いますので、変圧器のイラストを付け加えた図と比較しながら線のつながりを確認してみてください。

▲図3 デルタ-デルタ結線の模式図

電気の計算をする上では、次の接続図とベクトル図を用いる方が数学的な見方が簡単になるので、試験ではよくこちらの表記が使用されています。

▲図4 結線図
▲図5 電流・電圧のベクトル図

相電圧と線間電圧は同じ値となります。一方で、相電流は線電流と比べ\(\displaystyle\frac{\pi}{6}\)遅れますが大きさは\(\sqrt{3}\)倍になります。

・変圧器の励磁電流に含まれる第3高調波をΔ部分で循環させることができる
 (外部へ流出させない)
・1台の変圧器が故障してもV-V結線として使用することができる
・一次側の線間電圧と二次側の線間電圧に位相のずれがない

・中性点接地をすることができない

Y-Y結線

Y(スター)結線とは変圧器3台をY字をさかさまにしたような形に接続する結線方法です。

▲図6 スター-スター結線

三相交流の計算を考える時には、Y結線の形に置き換えて計算を進めると非常に簡単に考えていくことができます。実際の結線の様子は下の図7の様になっています。

▲図7 スター-スター結線の模式図

変圧器を流れる電流、電圧を考えるために、接続図及びベクトル図で表すと以下の様になります。
3台の変圧器で共有している接続部分のことを中性点と呼んでいます。

▲図8 接続図
▲図9 電流・電圧のベクトル図

Y結線では、相電圧が線間電圧と比べ\(\displaystyle\frac{\pi}{6}\)遅れ、大きさも\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)倍になります。一方、相電流と線電流は等しくなります。

・中性点接地をすることができる
・一次側と二次側の線間電圧に位相のズレがない

・変圧器の励磁電流に含まれる第3高調波が外部へ流出してしまう
 ※Y-Y結線で使用されることはほとんどありません。
 一般的には、3次巻線を設けてY-Y-Δ結線とします。

Δ-Y結線,Y-Δ結線

Δ-Y結線とは、一次側をデルタ結線、二次側をスター結線する方法です。一方、Y-Δ結線は一次側をスター結線、二次側をデルタ結線する方法のことを言います。

▲図10 デルタ-スター結線、スターデルタ結線

実際の結線は下図のように結線されます。

それぞれの結線方式における、接続図及び電流・電圧のベクトル図は下図のように表すことができます。

・Y結線側では中性点接地ができる
・Δ結線側は外部へ第3高調波を流出させない

・一次側と二次側の線間電圧に\(\displaystyle\frac{\pi}{6}\)[rad]の位相差を生じる

V-V結線

V-V結線は、2台の単相変圧器を使用し、一次側、二次側ともにV結線する方法です。

▲図11 V-V結線
結線の模式図

・変圧器が2台で三相電力の変圧ができる

・設備の利用率は、86.6%までしか使用できない

V-V結線時の出力の公式

\( P_{V} = \sqrt{3} V_{n} I_{n} \cos \theta \)

公式の導出は難しいので、数学が苦手という人は式を暗記するだけで問題ありません。下の図12の様に考えると、V結線の出力の公式は覚えやすいです。

▲図12 V-V結線の出力の覚え方

次のページではV-V結線の出力の公式の導出について解説します。
興味のある方は確認してみてください。

ここまでの内容で十分に試験問題を解くことができます。数学が苦手な方は問題練習に進みましょう。

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この記事を書いた人

中学校教師から電気エンジに転職し現在は66kV/155MWの工場で電気主任技術者として活動中です。
電験3種、電験2種を独学で合格した経験から、初心者がつまづきやすいポイントをどこよりもわかりやすく解説する電験ブログを目指して活動しています。
2023年より、電験三種のオンライン家庭教師も始めました!
目標は、電気監理技術者と独立し、年収1000万以上を達成することです。

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