【過去問解説】H22年理論 問17 静電気力に関する計算問題

問題

真空中において,図に示すように,一辺の長さが \(6\) [m] の正三角形の頂点 A に \(4×10^{−9}\) [C] の正の点電荷が置かれ,頂点 B に \(−4×10^{−9}\) [C] の負の点電荷が置かれている。 正三角形の残る頂点を点 C とし,点 C より下した垂線と正三角形の辺 AB との交点を点 D として,次の(a)及び(b)に答えよ。
ただし,クーロンの法則の比例定数を \(9×10^9\) [\( \rm N⋅m^2/C^2\)] とする。

(a) まず, \(q_0\) [C] の正の点電荷を点 C に置いたときに,この正の点電荷に働く力の大きさは \(F_C\) [N] であった。 次に,この正の点電荷を点 D に移動したときに,この正の点電荷に働く力の大きさは \(F_D\) [N] であった。力の大きさの比 \(\displaystyle \frac{F_C}{F_D}\) の値として,正しいのは次のうちどれか。

 (1)  \(\displaystyle \frac{1}{8}\)   (2)  \(\displaystyle \frac{1}{4}\)   (3)  \(2\)   (4)  \(4\)   (5)  \(8\) 

(b) 次に, \(q_0\) [C] の正の点電荷を点 D から点 C の位置に戻し,強さが \(0.5\) [V/m] の一様な電界を辺 AB に平行に点 B から点 A の向きに加えた。このとき, \(q_0\) [C] の正の点電荷に電界の向きと逆の向きに \(2×10^{−9}\) [N] の大きさの力が働いた。正の点電荷 \(q_0\) [C] の値として,正しいのは次のうちどれか。

  (1)  \(\displaystyle \frac{4}{3}×10^{−9}\)   (2)  \(2×10^{−9}\)   (3)  \(4×10^{−9}\)   

  (4)  \(\displaystyle \frac{4}{3}×10^{−8}\)   (5)  \(2×10^{−8}\) 

解説

答え:(a)-(1),(b)-(3)

(1) 力の大きさの比\( \frac{F_C}{F_D}\)について求める

電荷 \(q_0\) [C]を点Cに置いた時の力\(F_C\) [N]を求める

点Cに電荷を置いた時,A点の電荷との間の静電気力を \( F_{AC}\) ,B点の電荷との間の静電気力を \(F_{BC}\) とすると,力の大きさ\( \vert \vec{F}_{AC} \vert \) と \( \vert \vec{F}_{BC} \vert \) はそれぞれ,

\( \begin{align} F_{AC} &= \vert \vec{F}_{AC} \vert \\ \\ &= \left \vert \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{4 \pi \varepsilon_0 6^2} \right \vert \\ \\ &= \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{4 \pi \varepsilon_0 6^2} \\ \\ &= 9×10^9 \times \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{6^2} = q_0 \end{align} \)

\( \begin{align} F_{BC} &= \vert \vec{F}_{BC} \vert \\ \\ &= \left \vert \displaystyle \frac{-4 \times 10^{-9} \times q_0}{4 \pi \varepsilon_0 6^2} \right \vert \\ \\ &= \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{4 \pi \varepsilon_0 6^2} \\ \\ &= 9×10^9 \times \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{6^2} = q_0 \end{align} \)

上図より,点Cに置いた場合は,はたらく力\(F_C\)はベクトルの合成によって求める必要があります。

横方向のベクトルについて

\( \begin{align} & F_{AC} \cos\displaystyle \frac{\pi}{3} + F_{BC} \cos\displaystyle \frac{\pi}{3} \\ \\ &=q_0 \times \displaystyle \frac{1}{2} + q_0 \times \displaystyle \frac{1}{2} \\ \\ &= q_0 \end{align} \)

縦方向のベクトルについて

\( \begin{align} & F_{AC} \sin \displaystyle \frac{\pi}{3} – F_{BC} \sin \displaystyle \frac{\pi}{3} \\ \\ &= q_0 \times \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} – q_0 \times \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \\ \\ &= 0 \end{align} \)

よって合成ベクトル\( F_C \) の大きさは,三平方の定理を用いて,

\( F_C = \sqrt{ \left( q_0 \right)^2 + 0^2 } = q_0 \)

電荷 \(q_0\) [C]を点Dに置いた時の力\(F_D\) [N]を求める

点Dに電荷を置いた時,A点の電荷との間の静電気力を \( F_{AD}\) ,B点の電荷との間の静電気力を \(F_{BD}\) とすると,力の大きさ\( \vert \vec{F}_{AC} \vert \) と \( \vert \vec{F}_{BC} \vert \) はそれぞれ,

\( \begin{align} F_{AD} &= \vert \vec{F}_{AD} \vert \\ \\ &= \left \vert \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{4 \pi \varepsilon_0 3^2} \right \vert \\ \\ &= \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{4 \pi \varepsilon_0 3^2} \\ \\ &= 9×10^9 \times \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{3^2} = 4q_0 \end{align} \)

\( \begin{align} F_{BD} &= \vert \vec{F}_{BD} \vert \\ \\ &= \left \vert \displaystyle \frac{-4 \times 10^{-9} \times q_0}{4 \pi \varepsilon_0 3^2} \right \vert \\ \\ &= \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{4 \pi \varepsilon_0 3^2} \\ \\ &= 9×10^9 \times \displaystyle \frac{4 \times 10^{-9} \times q_0}{3^2} = 4q_0 \end{align} \)

点A,B,Dは,一直線上に並んでいるので,点Dに置いた電荷にはたらく力の大きさは,

\( F_D = F_{AD} + F_{BD} = 4q_0 + 4q_0 = 8q_0\)

力の大きさの比\( \displaystyle \frac{F_C}{F_D}\)について求める

以上の計算結果から,力の大きさの比\( \displaystyle \frac{F_C}{F_D}\)は,

\( \displaystyle \frac{F_C}{F_D} = \displaystyle \frac{ q_0 }{8q_0} = \displaystyle \frac{1}{8} \)

よって答えは,(1)になります。

(b) 正の点電荷 \(q_0\) [C] の値を求める

電界\(E\) [V/m] 中に電荷\( q\) [C] を置いた時にはたらく力の大きさ \(F\) [N] は,

\( F = E \times q\)

で求めることができます。よって,問の条件を図に表すと以下のようになっていることが分かります。

問題文には,「… \(q_0\) [C] の正の点電荷に電界の向きと逆の向きに \(2×10^{−9}\) [N] の大きさの力が働いた」と記載があるので,図より,

\( \begin{align} F_C – F_E &= 2 \times 10^{-9} \\ \\ q_0 \ – \ \left(0.5 \times q_0 \right) &= 2 \times 10^{-9} \\ \\ 0.5q_0 &= 2 \times 10^{-9} \\ \\ q_0 &= 4 \times 10^{-9} \end{align} \)

よって答えは,(3)となります。

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この記事を書いた人

中学校教師から電気エンジに転職し現在は66kV/155MWの工場で電気主任技術者として活動中です。
電験3種、電験2種を独学で合格した経験から、初心者がつまづきやすいポイントをどこよりもわかりやすく解説する電験ブログを目指して活動しています。
2023年より、電験三種のオンライン家庭教師も始めました!
目標は、電気監理技術者と独立し、年収1000万以上を達成することです。

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