【過去問解説】H26理論 問17 クーロン力に関する計算問題

問題

 図のように,真空中において二つの小さな物体A,Bが距離\(r\) [m]を隔てて鉛直線上に置かれている。Aは固定されており,Aの真下にBがある。物体A,Bはそれぞれ,質量\(m_A\) [kg],\(m_B\) [kg]をもち,電荷\(+q_A\) [C],\(−q_B\) [C]を帯びている。\(q_A>0,q_B>0\)とし,真空の誘電率を\(ε_0\) [F/m]とする。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

 ただし,小問(a)においては重力加速度g [m/s2]の重力を,小問(b)においては無重力を,それぞれ仮定する。物体A,Bの間の万有引力は無視する。

(a) 重力加速度\(g \ \rm [m/s^2]\)の重力のもとでBを初速度零で放ったとき,BはAに近づくように上昇を始めた。このときの条件を表す式として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) \(\displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0 r^2} > m_Bg \)  (2) \(\displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0 r}>m_Bg\)  (3) \(\displaystyle \frac{q_A q_B}{4πr}>m_Bg\)  

(4)  \(\displaystyle \frac{q_A q_B}{2πε_0 r^2}>m_Bg\)  (5) \(\displaystyle \frac{q_A q_B}{2πε_0r}>m_B g\)

(b) 無重力のもとでBを下向きの初速度\(v_B\) [m/s]で放ったとき,Bは下降を始めたが,途中で速度の向きが変わり上昇に転じた。このときの条件を示す式として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) \(\displaystyle \frac{1}{2}m_B v^2_B<\displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0r^2}\)  (2) \(\displaystyle \frac{1}{2}m_B v^2_B < \displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0 r}\)  (3) \(m_B v_B < \displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0r^2}\)  

(4) \(m_B v_B < \displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0 r}\)  (5) \(\displaystyle \frac{1}{2}m_B v_B<\displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0r^2}\)

解説

答え:(a)-(1),(b)-(2)

(a) 物体Bが物体Aに近づく動きをする条件を求める

物体Bにはたらく力を求める

物体Bにはたらく静電気力の大きさは,クーロンの法則を用いて以下のように表すことができます。

\( F_e = \displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0 r^2} \) [N]

一方,物体Bにはたらく重力は,質量\(m_B\) [kg]と重力加速度\(g\) [\( \rm m/s^2\)]を用いて,

\( F_g = m_B g \) [N]

となります。物体Bにはたらく2つの力を問題の図に書き加えると下図2のように表されます。

問題の条件から2力の大小を決める

問題文には,「…Bを初速度零で放ったとき,BはAに近づくように上昇を始めた。」と記載があるので,物体Aの方向に向かい力の方が大きいことが読み取れます。

図2より,物体Aに近づく方向の力は静電気力であることから,(a)の答えは,

\( \displaystyle \frac{1}{2}m_B v^2_B<\displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0r^2}\)

となります。

(b) 運動している物体Bが物体Aに近づく動きをする条件を求める

物体Bの運動エネルギーを求める

問題文には,「無重力のもとBを下向きの初速度\(v_B\) [m/s]で放った」と記載がるので,物体Bの持つ運動エネルギーの大きさは,

\( \displaystyle \frac{1}{2} m_B v_B^2 \)

と表すことができます。

物体Bが初めの状態で持っている電気的なエネルギーを求める

電荷を帯びた物体が持つ電気的なエネルギー\(W\) [J]の大きさは,電位\(V\)[V]と電荷\(Q\) [C]を用いて,

\( W = V \times Q\)

と表すことができます。

物体Bが置かれている地点は,物体Aが持つ電荷による電位\(V_A\)の位置となるので,

\( V = V_A = \displaystyle \frac{q_A}{4πε_0 r}\) [V]

となります。物体Bは電荷\(q_B\) [C]を持っているので,電気的なエネルギー\(W\)の大きさは,

\(\begin{align} W &= V_A \times q_B \\ \\ &= \displaystyle \frac{q_A}{4πε_0 r} \times q_B \\ \\ &= \displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0 r} \end{align} \)

問題の条件から2力の大小を決める

問題文には,「…Bは下降を始めたが,途中で速度の向きが変わり上昇に転じた。」と記載があるので,運動エネルギーよりも電気的なエネルギーの方が大きいと読み取れます。

したがって,問題文の動きと合致する条件は,

\(\displaystyle \frac{1}{2}m_B v^2_B < \displaystyle \frac{q_A q_B}{4πε_0 r}\)

となります。

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この記事を書いた人

中学校教師から電気エンジに転職し現在は66kV/155MWの工場で電気主任技術者として活動中です。
電験3種、電験2種を独学で合格した経験から、初心者がつまづきやすいポイントをどこよりもわかりやすく解説する電験ブログを目指して活動しています。
2023年より、電験三種のオンライン家庭教師も始めました!
目標は、電気監理技術者と独立し、年収1000万以上を達成することです。

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