【過去問解説】H28年理論 問17 コンデンサに関する計算問題

問題

図のように、十分大きい平らな金属板で覆われた床と平板電極で作られる空気コンデンサが二つ並列接続されている。二つの電極は床と平行であり、それらの面積は左側が \(A_1 = 10^{−3} \rm \ m^2\)、右側が \( A_2 = 10^{−2} \rm \ m^2\) である。床と各電極の間隔は左側が \( d = 10^{−3} \rm \ m\) で固定、右側が \(x\) [m] で可変、直流電源電圧は \(V_0 = 1000 \rm \ V\) である。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、空気の誘電率を \(ε= 8.85×10^{−12} \rm \ F/m\) とし、静電容量を考える際にコンデンサの端効果は無視できるものとする。

(a) まず、右側の \(x\) [m] を \(d\) [m] と設定し、スイッチ S を一旦閉じてから開いた。このとき、二枚の電極に蓄えられる合計電荷 \(Q\) の値 [C] として最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \(8.0×10^{−9}\)  (2) \(1.6×10^{−8}\)  (3) \(9.7×10^{−8}\) 
 (4) \(1.9×10^{−7}\)  (5) \(1.6×10^{−6}\)

(b) 上記(a)の操作の後、徐々に\(x\)を増していったところ、 \( x = 3.0×10^{−3} \rm m\) のときに左側の電極と床との間に火花放電が生じた。左側のコンデンサの空隙の絶縁破壊電圧 \(V\) の値 [V] として最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \(3.3×10^2\)  (2) \(2.5×10^3\)  (3) \(3.0×10^3\) 
 (4) \(5.1×10^3\)  (5) \(3.0×10^4\)

解説

 答え:(a)-(3)、(b)-(2)

(a) 蓄えられる電荷の量\(Q\)[C]を求める

各コンデンサの静電容量を求める

左右のコンデンサの静電容量をそれぞれ\(C_1\)、\(C_2\)[F]で表すと以下のようになります。

\( C_1 = ε \displaystyle \frac{A_1}{d} = 8.85 \times 10^{-12} \times \displaystyle \frac{10^{−3}}{10^{−3}} = 8.85 \times 10^{-12} \) [F]

\( C_2 =ε \displaystyle \frac{A_2}{d} =8.85 \times 10^{-12} \times \displaystyle \frac{10^{−2}}{10^{−3}} = 8.85 \times 10^{-11}\) [F]

よって、並列に接続された2つのコンデンサの合成容量\(C\)[F]は、

\( \begin{align} C &= C_1 + C_2 \\ &= 8.85 \times 10^{-12} + 8.85 \times 10^{-11} =11ε= 9.735\times 10^{-11} \ \rm [F] \end{align}\)

と計算することができます。

蓄えられる電荷の量を計算する

電源\(V\)[V]に接続された静電容量\(C\)[F]のコンデンサに蓄えられる電荷\(Q\)[C]の量は、

\( Q = C \times V \ \)[C]

の式で計算することができるので、

\( Q = C \times V_0 = 9.735\times 10^{-11} \times 1000 = 9.735 \times 10^{-8}\) [C]

となり、答えは(3)になります。

(b) 放電時の電圧の大きさを求める

\(x= 3.0×10^{−3} \rm m\) のときの回路全体の静電容量を求める

右側のコンデンサは、極板間の距離が初めの3倍になっているので、

\(C’_2 = \displaystyle \frac{1}{3} \times C_2 = 2.95 \times 10^{-11}\) [F]

となります。よって、回路全体での静電容量\(C’\) [F]は、

\( C’ = C_1 + C’_2 = 0.885 \times 10^{-11} + 2.95 \times 10^{-11} = 3.835 \times 10^{-11} \) [F]

放電時の左側のコンデンサの電圧を計算する

スイッチSが開放されているため、電源からの電荷の供給はないため、左右のコンデンサの合計の電荷量は(a)で計算した値から変化することはありません。

右のコンデンサの極板間距離\(x\)を大きくすると、静電容量\(C_2\)は小さくなるので、蓄えられていた電荷は、2つのコンデンサの電位差に差が生じないように、左側のコンデンサへ移動ます。

回路全体の静電容量\(C’\) [F]と全体の電荷量\(Q\) [C]より、放電が発生したときの電圧の大きさ\( V’\) [V]は、

\( \begin{align} Q &= C’ \times V’_1 \\ \\ 9.735 \times 10^{-8} &= 3.835 \times 10^{-11} \times V’_1 \\ \\ V’_1 &= \displaystyle \frac{9.735 \times 10^{-8}}{3.835 \times 10^{-11}} \approx 2.538 \times 10^3 \ \rm [V] \end{align} \)

答えは(2)になります。

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この記事を書いた人

中学校教師から電気エンジに転職し現在は66kV/155MWの工場で電気主任技術者として活動中です。
電験3種、電験2種を独学で合格した経験から、初心者がつまづきやすいポイントをどこよりもわかりやすく解説する電験ブログを目指して活動しています。
2023年より、電験三種のオンライン家庭教師も始めました!
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