【過去問解説】R3理論 問7 内部抵抗を含む直流電源回路の計算問題

目次

問題

図のように,起電力 \(E\ \rm[V]\) ,内部抵抗 \(r\ \rm[\Omega]\) の電池 \(n\) 個と可変抵抗 \(R\ \rm[\Omega]\) を直列に接続した回路がある。この回路において,可変抵抗 \(R\ \rm[\Omega]\) で消費される電力が最大になるようにその値 \([\Omega]\) を調整した。このとき,回路に流れる電流 \(I\) の値 \(\rm[A]\) を表す式として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)  \(\displaystyle \frac{E}{r}\)  (2)  \(\displaystyle \frac{nE}{\left(\displaystyle \frac{1}{n}+n\right) r} \)  (3)  \(\displaystyle \frac{nE}{\left(1+n \right) r}\)  (4)  \(\displaystyle \frac{E}{2r}\)  (5)  \(\displaystyle \frac{nE}{2}\)

解説

答え:(4)

\(n = 1\) のときの電流の大きさを計算する

上図のように,電池が複数個ある問題では,\(n\) に1と2を代入した場合にどうなるかを考えると解答方法のパターンが導き出しやすいです。

電池が1個の場合,回路図及び回路を流れる電流,可変抵抗 \(R\) で消費される電力は以下のように考えることができます。

【回路を流れる電流】
\( I = \displaystyle \frac{E}{R + r} \ \rm [A]\)

【可変抵抗で消費する電力】
\(\begin{align} P &= R \times I^2 \\ \\ &= R \times \color{red}{ \left( \displaystyle \frac{E}{R + r} \right)^2 } \\ \\ &= \displaystyle \frac{RE}{R^2 + 2rR + r^2} \\ \\ &= \displaystyle \frac{E}{R + 2r + \displaystyle \frac{r^2}{R}} \ \rm [W] \end{align}\)

ここで,問題文の条件より,可変抵抗 \(R\ [\Omega]\) は常に消費電力が最大になるように調整されるので,電力の式を元に可変抵抗 \(R\) の値を考える必要があります。

電力が最大になるには,電力の式の分母が最小になればよいので,分母の部分を変数 \(R\) で1回微分し,微分で得られた式が \( =0\) となれば,最小になるといえます。

電力の式の分母を関数\(f \left(x \right) \)で表すすると,変数 \(R\) について1回微分した場合,

\( \begin{align} f \left(x \right) &= R + 2r + \displaystyle \frac{r^2}{R} \\ &\downarrow \\ f’ \left(x\right) &= 1 – \displaystyle \frac{r^2}{R^2} \end{align} \)

と表すことができます。微分した式が \(f’ \left(x \right) = 0\) となれば,元の式の最小の値がわかるので,

\(\begin{align} 1 – \displaystyle \frac{r^2}{R^2} &= 0 \\ \\ 1 &= \color{red}{\displaystyle \frac{r^2}{R^2}} \\ \\ R^2 &= r^2 \\ \\ R &= r \end{align} \)

以上が電力が最小となる可変抵抗 \(R\) の値になります。

この時,回路を流れる電流の大きさは,

【回路を流れる電流】
\(\begin{align} I &= \displaystyle \frac{E}{R + r} \\ \\ &= \displaystyle \frac{E}{\color{red}{r} + r} \\ \\ &= \displaystyle \frac{E}{2r} \ \rm[A] \end{align} \)

と求めることができます。

\( n = 2\) のときの電流の大きさを計算する

次に,\(n=2\) の場合について考えます。

電池が2個に増えた場合,回路を流れる電流と可変抵抗で消費される電力はそれぞれ,以下の式で表すことができます。

【回路を流れる電流】
\( I = \displaystyle \frac{2E}{R + 2r} \ \rm [A]\)

【抵抗で消費される電力】
\(\begin{align} P &= RI^2 \\ \\ &= R \times \left( \displaystyle \frac{2E}{R + 2r} \right)^2 \\ \\ &= \displaystyle \frac{4RE^2}{R^2 + 4rR + 4r^2} \\ \\ &= \displaystyle \frac{E^2}{\displaystyle \frac{R}{4} + r + \displaystyle \frac{r^2}{R}} \ \rm[W] \end{align} \)

電池が1つの時と同様に,消費電力の式の分母を変数 \(R\) について微分することで,電力が最大となる条件を求めます。

電力の式の分母を関数\(f \left(x \right) \)で表すすると,変数 \(R\) について1回微分した場合,

\( \begin{align} f \left(x \right) &= \displaystyle \frac{R}{4} + r + \displaystyle \frac{r^2}{R} \\ &\downarrow \\ f’ \left(x\right) &= \displaystyle \frac{1}{4} – \displaystyle \frac{r^2}{R^2} \end{align} \)

と表すことができます。微分した式が \(f’ \left(x \right) = 0\) となれば,元の式の最小の値がわかるので,

\(\begin{align} \displaystyle \frac{1}{4} – \displaystyle \frac{r^2}{R^2} &= 0 \\ \\ \displaystyle \frac{1}{4} &= \color{red}{\displaystyle \frac{r^2}{R^2}} \\ \\ R^2 &= 4r^2 \\ \\ R &= 2r \end{align} \)

以上が電力が最小となる可変抵抗 \(R\) の値になります。この時,回路を流れる電流の大きさは,

【回路を流れる電流】
\(\begin{align} I &= \displaystyle \frac{2E}{R + 2r} \\ \\ &= \displaystyle \frac{2E}{\color{red}{2r} + 2r} \\ \\ &= \displaystyle \frac{E}{2r} \ \rm[A] \end{align} \)

と求めることができます。

以上のことから,電池の数が変化しても問の条件においては,回路を流れる電流 \(I\) の値は,\(\displaystyle \frac{E}{2r}\) で一定となることが推測できます。

電池が \(n\) 個の場合について考える

最後に,電池の数が \(n\) 個の場合について考えます。

これまでと同様に計算でき,回路を流れる電流と可変抵抗で消費される電力の式は,

【回路を流れる電流】
\( I = \displaystyle \frac{nE}{R + nr} \ \rm [A] \)

【可変抵抗で消費される】
\( \begin{align} P &= R I^2 \\ \\ &= R \times \left( \displaystyle \frac{nE}{R + nr} \right)^2 \\ \\ &= \displaystyle \frac{n^2RE^2}{R^2 + 2nrR + n^2r^2} \\ \\ &= \displaystyle \frac{E^2}{\displaystyle \frac{R}{n^2} + \displaystyle \frac{2}{n}r + \displaystyle \frac{r^2}{R}} \ \rm[W] \end{align} \)

電力の式の分母を関数\(f \left(x \right) \)で表すすると,変数 \(R\) について1回微分した場合,

\( \begin{align} f \left(x \right) &= \displaystyle \frac{R}{n^2} + \displaystyle \frac{2}{n}r + \displaystyle \frac{r^2}{R} \\ &\downarrow \\ f’ \left(x\right) &= \displaystyle \frac{1}{n^2} – \displaystyle \frac{r^2}{R^2} \end{align} \)

と表すことができます。微分した式が \(f’ \left(x \right) = 0\) となれば,元の式の最小の値がわかるので,

\(\begin{align} \displaystyle \frac{1}{n^2} – \displaystyle \frac{r^2}{R^2} &= 0 \\ \\ \displaystyle \frac{1}{n^2} &= \color{red}{\displaystyle \frac{r^2}{R^2}} \\ \\ R^2 &= n^2 r^2 \\ \\ R &= nr \end{align} \)

以上が電力が最小となる可変抵抗 \(R\) の値になります。この時,回路を流れる電流の大きさは,

【回路を流れる電流】
\(\begin{align} I &= \displaystyle \frac{nE}{R + nr} \\ \\ &= \displaystyle \frac{nE}{\color{red}{nr} + nr} \\ \\ &= \displaystyle \frac{E}{2r} \ \rm[A] \end{align} \)

と求めることができます。

したがって,答えは(4)となります。

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この記事を書いた人

中学校教師から電気エンジに転職し現在は66kV/155MWの工場で電気主任技術者として活動中です。
電験3種、電験2種を独学で合格した経験から、初心者がつまづきやすいポイントをどこよりもわかりやすく解説する電験ブログを目指して活動しています。
2023年より、電験三種のオンライン家庭教師も始めました!
目標は、電気監理技術者と独立し、年収1000万以上を達成することです。

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